MUIのこと

素材である生豆をコーヒーにするもの、それが焙煎

コーヒー豆は焙煎をしない限り味も香りもしません。焙煎して初めて、コーヒーになるのです。
でも、この焙煎という作業が、美味しいコーヒーを飲むことを難しくしているもうひとつの原因です。

コーヒーと料理の相関関係

コーヒーと料理の相関関係って、いったい何のこと?と思われたかもしれません。
一番シンプルな「肉を焼く」と言う事を例に挙げてみましょう。

  • コーヒー豆の美味しさ=肉の美味しさ
  • コーヒー豆の鮮度=肉の鮮度
  • ロースター(焙煎士)=料理人

と考えてみてください。

どんなに美味しくて、鮮度が良いお肉でも、
そのポテンシャルを最大限に引き出すには高いスキルが必要です。

「ただ焼くだけ、されど焼くだけ」

一流のシェフになるために、どれぐらいの修行が必要でしょうか?
1年、2年ではなれませんよね。
ロースターも料理人と同様、どんなにセンスがあっても早くて5年、普通は10年近くかかります。

ある程度の物なら趣味の延長でも出来るでしょうが、感動を与えられるほど美味しいものを作るにはそうは行きません。
素材のポテンシャルを引き出す、ただそれだけの事が本当に難しい んです。

焙煎ってそんなにむずかしいの?と考える方いると思いますが、
高いスキルで適切に焙煎されたコーヒーを飲んでもらえれば納得していただけるはずです。
あまりの違いにショックを受けるかもしれません。(笑)

そして他にも料理と似た点があります。それは仕入れです。

「MUIさんは、そこまでこだわっているなら自分で生産地から仕入れないの?」
と聞かれることがありますが
「しませんよ。」とお答えします。

良い素材を仕入れることには徹底的にこだわりますが、必ずしも自分で買い付けをする必要はありません。
LCFという最高の素材を提供してくれるグループに所属しているのだからなおさらです。そしてその部分にエネルギーを割かなくて良い分、素材のポテンシャルを最大限に引き出すための、とても難しいスキルである「焙煎」に集中できると考えています。
とは言えもっと店としての力をつけて焙煎を任せられる人間が育てば買い付けにも関わりたいという思いもあります。

コーヒー業界が抱える焙煎の問題

コーヒーの美味しさを感じるために特別な勉強は必要ありません。飲み慣れているか、そうでないかも関係ありません。
他の食品と同じように、品質の良い物であれば素直に「美味しい!」と感じられる飲み物です。

ですが、我々提供する側はそれではいけません。

ただ「美味しい」ではなくてそれがどう美味しいのか、なぜ美味しいのか、最大限に個性を引き出せているのか、など味や香りを深く分析出来ではじめて美味しい物が提供できます。

1人前のロースターを育てるには、高いスキルを持ったロースターの指導の元、
高品質のコーヒー豆の焙煎経験と高度な味覚、嗅覚の訓練を積み重ねることが必要です。

ところが、これがとても難しいのです。

高品質のコーヒーを多く扱う店は小規模なため、必然的に焙煎が出来るポジションにつけるのは1店舗で数人に限られてしまいます。そのためスキルの高いロースターが育ちにくく、指導してもらう機会も環境も増えないという悪循環が続き、未経験で開業される方がとても多いのが現状です。

経験を積む環境が少ないことも問題ですが、だからと言って未経験で開業し、焙煎をはじめるのが良いとは思いません。

コーヒー業界が抱える焙煎の問題

僕はもちろん未経験で始めるなんて考えもしませんでした。しっかりとしたスキルを身に着けるため、スペシャルティの中でも世界中から最高峰のコーヒーが集まる堀口珈琲で焙煎の指導を受けました。
他では取り扱えないような品質のコーヒーを、莫大な種類、高いスキルを持った指導者の下で毎日繰り返し大量に焙煎するという、これ以上ない恵まれた環境で修業を積めた事は、他の誰にも負けない強みになっていると思います。

料理の世界を見てみれば、料理学校で料理を学んでいる熱意のある学生はたくさんいますが、卒業と同時に開業するなんて聞いたことがありません。

なぜか?

経験が圧倒的に足りないからです。
そんなの当たり前でしょ、と思う方の方が多いと思います。
コーヒーも同じです。
ロースターを開業するには、すし屋と同じくらいのスキルが必要」と言われますが、修行経験も無しに開いたとして、果たして本当に良い物が提供できるのでしょうか。(絶対にムリだとは思いませんが・・・)

センスがあろうとなかろうと、しっかりとした経験を積まなければそれが開花することもないと思います。

日本に古くから伝わる考えに「守破離」というものがあります。
師の教え・基本の型を「守」り、身についた後それを「破」って自分の型を作り、「守」と「破」がある個人は自分自身とそのスキルを客観的によく理解しているため、最終的に型から自由になり「離」れて自在になることが出来るという考えです。

茶道や武道などの師弟関係についてのものですが、どんな仕事にも共通する部分がありますよね。
もちろんセンスがあった方が良いに決まっていますが、センスよりも経験、これが僕が8年間の修行で得た答えです。

この問題は特にこれを読んでいるかもしれないロースターを目指している方にはしっかりと考えていただきたいものです。
ある程度の品質のコーヒー豆や、性能の良高い焙煎機はお金があれば入手できます。
しかしコーヒー豆を適切に焙煎しポテンシャルを引き出すと言うスキルはお金では買えません。
一朝一夕に出来る事でもありません。長い修行経験が必要です。

どんなに品質の高いコーヒーでも、適切な焙煎をしないと美味しいコーヒーは飲めません。
逆に台無しにするのは簡単です。焙煎はそれほどむずかしい作業なんです。
本当に良い物を飲んでもらいたい、生産者の想いを伝えたいと思っているならば、安易な開業はおすすめしません。

少しでもこの状況を改善すべく、MUIはロースターの指導・育成にも力を注いでいます。

図解!美味しいコーヒーの方程式

これまでの話を図にしてみます。

コーヒーの方程式概念図
【図2】コーヒーの方程式概念図

ここで、最初にお話したことを繰り返します。

良いコーヒー」には、「生豆の品質」×「鮮度」×「焙煎の技術」の3つの要素がそろっている事が大切ですが、本質的な美味しさは素材である「生豆の品質で決まります。

「鮮度」はその美味しさを出来るだけ損なわないようにするもの、「焙煎の技術」は素材のポテンシャルを引き出すもので、美味しさを加えることはできません。

これはとても大切なことです。

もちろん豆の挽きかたや淹れ方がどうでも良いというわけではありませんが、決まったやり方を丁寧に守れば、誰もが簡単にできることばかりです。「コーヒーの美味しさは淹れ方で決まる」というプロがいたら、疑ってみる事をおすすめします。(笑)

MUIではスペシャルティコーヒーの中でも
さらに入手が難しいレベルのコーヒー豆を使用し、
そのポテンシャルを最大限に引き出す焙煎をすることで、
コーヒーそのものが持つ美味しさをそのままお届けしています。

コーヒー業界が抱える焙煎の問題

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